●中国電力

 小阪部発電所
 小阪部調整池発電所
 新成羽川発電所
 田原発電所
 黒鳥発電所
 帝釈川発電所
 新帝釈川発電所

●岡山県企業局

 新見発電所
 千屋発電所
 三室発電所
 高瀬発電所

●その他の事業者

 羽山発電所
 大佐ダム発電所

●番外編

 山野発電所



高梁川水系福枡川 中国電力 帝釈川発電所

所  在:広島県神石郡神石高原町(旧油木町)新免
来  歴:山陽中央水電→山陽配電→日本発送電→中国電力

形  式:水路式
発電開始:1924年3月
出  力:2400kW
使用水量:3.10立方メートル/秒
落  差:95.17メートル


広域図 by Mapion

岡山県の水力発電を語るときに外せないのがこの帝釈川発電所。広島県にありますが管轄が倉敷電力所ですし県内扱いにさせてもらいます。写真をご覧いただく前に少々お勉強を…

戦前の岡山県で中国水力電気とともに勢力を二分した山陽中央水電いう電力会社がありまして、その前身である両備水電が開業に当たって段取りしたのがこの帝釈川発電所と成羽川発電所です。

両備水電としては最初からこの2つを帝釈川系の第一、第二発電所いう位置づけでシリーズ運用するつもりだったそうです。完成するより先に事業主が合併と社名変更をしたのでどちらも山陽中央水電の発電所としてデビュー、当時堤高日本一を誇った帝釈川ダムおよび新名勝のダム湖「神竜湖」ともども戦前の中国地方を代表する水力コンビとして大活躍しました。

戦後になって岡山近辺でも水島や福山、三原…いうあたりに工業地帯が開発されましたので当然電力の需要が高まります。また電力生産の事情も変わりまして火力発電がベースを任されるようになりました。

ところで火力いうのは需要の増減に応じて発電量を増やしたり減らしたりが苦手なんやそうです。そこへいくと水力は水を流したり止めたりすることでわりと簡単に調整が効きますんで、工場が動いてる昼間にドーンと電気を起こすピーク発電を任されるようになりました。

しかるにこの2発電所は上流側に帝釈川ダムの貯水池を持ってはいますけど下流側が流れ込み式なのでダムを開けてもコンビの最大発電量になかなか達しませんし、間に自然の川が挟まったりしてロスも多いので時代が求めるタイムリーな発電にはイマイチ向かんかったらしいですわ。

そこで流れ込み式の成羽川発電所を廃止してピーク発電に最適化された新成羽川田原黒鳥の電源トリオを開発、自前の貯水池を持つ帝釈川発電所も陰ながらその一助として最大4400kWで稼働してきました。

しかし中国電力が2003年に帝釈川ダムを再開発して新帝釈川発電所を新設、神竜湖はその専用貯水池として最大11000kWのピーク電源に生まれ変わりました。その結果旧来の帝釈川発電所は支水路だった福枡川からの流れ込み送水だけで最大2400kWを出力する小水力発電所として稼働しています。以上が帝釈川発電所と成羽川電源開発のおおまかな流れです。


お疲れさまでした!それでは帝釈川発電所にご案内いたします。


新成羽川ダム湖は上流側が広島県に大きく食い込んでおりますがその喉元に当たる帝釈川と東城川(成羽川)の合流点近くにこの発電所があります。味のある建物が少ない中電の水力発電所にあって貴重だったゴシック風の建屋が無残なプレハブに建て変わってました。

帝釈川ダムの再開発に合わせたものでしょうけど割り切りがよすぎますわ。もっと自分とこの歴史遺産を大切にしましょうや中電さん。

水圧鉄管。帝釈川ダムから送水されてたころは左右両方を発電用に使うてたみたいですが今は右側だけが現役のようでした。真ん中のは余水管や思います。

ヘッドタンク。再開発以前に改修を受けてるみたいでした。紙工作みたいな水門小屋が中電らしいところ。

放流口。上の丸い穴は余水用や思います。この辺も改修されてますねー

対岸から見た発電所全景。真新しくも素っ気ない建屋と時代を感じさせる石積みが対照的でした。画面の左下に新帝釈川発電所の放流口が見えます。


高梁川水系福枡川 福枡川取水えん堤

広島県神石郡神石高原町(旧神石町)草木
高さ:9.03メートル


上述の通り帝釈川ダムを新発電所に横取りされましたんで、帝釈川発電所は福枡川の水だけしかもらえなくなりました。その取水えん堤は地形図で見ても道らしい道がないド限界なところにあるらしく、実際ほっそい道をウネウネ走って車で行けるとこまで行ってもえん堤どころか土建屋のズリ捨て場以外に何もありません。

当然その先は歩くより他ありませんので車を置いて歩き始めましたが道が猛烈に怪しくなってきまして…

画面中央付近に手すりみたいなのが見えてますねー これがえん堤への道ですわ。

その道を進むとこんな有り様に… こういうのは廃道いうんちゃう普通? 正直いうて引き返したい気持ちですが次いつ来れるかわかりませんし天気もええので引き続き前へ進みます。

こういう感じに手すり付きの桟道が川にへばり付いてます。手すりはへし折れてても路面は手入れされてましてさすが中電さんですわ。とはいえ歩けども歩けどもえん堤の影すら見えません。

この通りついに桟道すらなくなりまして河原を歩く破目になりました。こんなタフ&ワイルドなえん堤がエネルギア〜♪の中国電力にあるとはねー 感心したいうか見直したいうか… ホンマ水力の世界は奥が深いわ。

足を挫かんように用心しいしい歩くこと20分、ついにえん堤が姿を見せてくれました。コンクリが横たわってるだけの低いささやかな井堰を想像してましたけど意外に本格的ですねー 例の紙工作みたいな水門小屋もそびえ立ってます。

このえん堤は帝釈川ダムと同じ1924年の完成。しかしコンクリの色が時代を感じさせませんのでこっちも改修されてるんでしょうねー 近寄って見たえん堤の越流部。前の日にも降りましたんで水量は十分あるはずですが越流も放流もしてないいうことは全量発電所に送ってるみたいでした。

それにしてもどうやって工事したんかさっぱり見当もつきません。モッコかついでオール人力ですか…

越流部のアップ。このえん堤は立ち入りできませんでしたので金網のすき間からレンズを突っ込みました。高さは10メートルもない感じですが場所が場所だけに下流側がえらい深く感じます。

取水施設の様子。左の機械もんがある部分は沈砂池、右のコンクリの櫓は水路の制水門や思います。見れば見るほど余裕のない立地ですねー ようまあこんなところにこれだけのもんを造ったもんやで…と改めて思いました。

角度を変えてみた様子。沈砂池の下に排砂水門らしい四角い穴が見えます。ぜひ間近で見物したいところですが金網をよじ登るのも気が引けますしおとなしく引き返しました。

上流側の様子。ダム湖の常で澱んではいますけど静けさが支配してまして神秘さすら漂う淵でした。

参考文献
中国地方の水力発電所:中国電力株式会社
中国地方電気事業史:中国地方電気事業史編集委員会


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