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県外の発電所シリーズ

千代川水系北股川 中国電力 芦津発電所 その1

鳥取県八頭郡智頭町大字芦津
来  歴:山陽水力電気→日本電力→日本発送電→中国電力

形  式:ダム水路式
発電開始:1936年12月
出  力:2600kW

使用水量:1.67立方メートル/秒
落  差:189.32メートル

その2はこちら


新大呂発電所からさらに山また山を分け入ること数十分。ホンマに発電所があるんかいな…と不安になってきたころ忽然と姿を現しました。

普通水力発電所は勾配が一服したところにあるもんですけどここは全く人煙が絶えたキツい坂道の途中にポツンと建ってましてちょっと世捨て人ムード。

下界とはだいぶ気温も違いまして暖冬の3月やいうのにご覧の通り融け残りの雪がちらほら。

建屋の様子。なんかのっぺり顔の一つ目小僧みたいですねー 妻面の左右にもピラスターいうんか柱状の装飾がありますし丸みを帯びた頂部ともども中国地方では珍しくデザイン性が高い建屋です。

それもそのはずで北股川の電源開発を行った山陽水力電気いう会社は関西の資本だったんですわ。開発の目的は加古川の日本毛織など播州工業地帯への送電やそうです。

送電設備。雪深いところのはずですが雪害対策らしいものはなさそうな感じ。

山陽水力電気の代表取締役は日本毛織の社長が兼任してまして実質的に同社の電力部みたいなもんだったらしいです。需要家の中には神戸姫路電気鉄道、今の山陽電鉄も含まれてたそうですわ。

水圧鉄管。勾配の途中に鞍部がありますんでヘッドタンクを見上げることは出来ませんでした。

管路の脇には小さい庭がしつらえてありました。有人時代の係員が丹精したんでしょうねー 無人となった今でも見回りのついでに草取りや剪定をしてるみたいでウチの庭よりきれいです。

この発電所は圧力送水でペルトン水車を回してまして小さいながら実にいっちょまえですわ。ちなみに岡山県内にはペルトン水車がありませんから。

三滝ダムへ登る林道から水圧管路を遠望した状況。矢印の少し上に鞍部が見えます。

ところで日本毛織は山陽水力電気を因幡水力電気に売却しました。因幡水電は鳥取県八頭郡八東町に八東発電所を造りましたけど目的は同じく関西工業地帯への送電ですわ。

ていうことは自前の送電線を作るより山陽水電の既設線を使うほうが圧倒的に楽ですわね。ですんで会社ごと買収したわけ。

放水の状況。静かな谷あいでブシューっと騒々しく吹きだしてました。奥に見えるのは芦津ダム。この発電所はピーク発電を行ってますんで逆調整池を持ってるわけ。この逆調整池については新大呂発電所のページをご覧下さい。

山陽水電は因幡水電に買われた後もしばらく存続してました。ところで因幡水電は実は日本電力の子会社でして後に両者とも親会社に合併されましたから北股川3発電所は日本発送電に取り上げられるまで中国地方で実に珍しい「五大電力」の経営だったことになります。

ところで供給先に神戸姫路電鉄があると書きましたけどこっちは同じ五大電力の宇治川電気に経営が移りました。日本電力にとって宇治川電気は親会社に当たりましたけど関西の電力シェアをめぐって骨肉の親子ゲンカをやらかしたことは有名な話です。しかし鳥取の山奥で起こした電気については揉めんと親子で仲良う受け渡ししてたみたいですわ。


千代川水系北股川 三滝ダム

鳥取県八頭郡智頭町大字芦津
高さ:23.80メートル


中国電力はバットレスダムを2件持っております。2車線の道で難なく行ける片割れの恩原ダムに比べてこっちの方はわりと命がけ…いう話は聞いて承知してましたけどウソやありませんでしたねー

上の発電所を取材したのは3月でしたけどこの時はクソ細い林道をダム手前まで入り込んだところで1メートル近い残雪と除雪のホイールローダに阻まれあえなく退散。

4月に入って中電さんから「雪どけの水がたまって只今越流中…」いう情報をつかんでさっそく出動しましたがその前の週に地震がありましてねー まとまった雨も降りましたし落石の後が生々しい林道の崖っぷちをビビリながら進んでいきました。この辺は熊も出るそうですし…

左岸洪水吐の様子。このダムは左右に洪水吐を備えてまして比翼連理の水流を拝めるはずですがダムの下いうか前に降りる道がない…とも聞いております。

上流側の様子。向こうに右岸側洪水吐が見えます。以前は左右ともスライドゲートを備えてたみたいですが恩原ダム同様に撤去されて自由越流になってました。

中国自然歩道から見た堤体。左右から越流してる様子がわかります…けどやっぱりハッキリ見たいですよねー

左岸側洪水吐越しに右岸側を見た様子。自然歩道は林道の途中にあるトンネル付近から川沿いに来てますが実は森林鉄道の跡やそうですわ。

ワイドな洪水吐を横一線に越流していく北股川の水。雪どけによる増水のせいか穏やかな流れ方で音もサラサラ…と心洗われる響き。これは一見の価値がありました。

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